御曹司は眠り姫に愛を囁く
「兄の俺が言うのもなんだけど…稜はゲス男だから・・・もう別れた方がいいよ」

「副社長・・・」

「貴崎さんなら、稜よりももっといい男が現れるって・・・」
副社長はすべて、お見通しで、私を慰めてくれた。
稜さんではなく、副社長と恋人になれば、こんな風に苦しく切ない想いはしなかったかもしれない。

副社長にも相手を選ぶ権利があるか・・・

ヘア全体に緩いパーマをかけたチャラい雰囲気の稜さんと正反対の副社長。
サラサラしたツヤのある黒髪をツーブロックにカットし、清潔感をアピール。
聡明な瞳とキリッとした眉、鼻筋も通ったイケメン、社内報でチラリとプロフを見た限りでは特技の剣道は三段の腕前。

眉目秀麗で、政治家の長男・椎名崇(シイナタカシ)様と似て、エリート臭が漂う。
三つ揃いの紺のストライプスーツを卒なく着こなし、落ち着いた大人の男性。

長男の椎名崇様は曽祖父で『シーナ』の先々代の社長に就き、引退後は政界へ、法務大臣を務めあげた椎名珪(シイナケイ)様に憧れ、政界に進出。

若手の衆院議員としての活躍を期待されていた。

崇様も、三男の稜さんはダメだけど、副社長になら『シーナ』を任せられると考えて、自分は迷わず政界に入ってしまった。

椎名三兄弟を見た限り、私は一番貧乏くじを引いてしまった・・・

「アドバイスありがとうございました。副社長」

このままずるずると稜さんと交際しても、私の心の傷が広がるばかり、副社長に背中を押されて、別れを決意した。





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