御曹司は眠り姫に愛を囁く
今夜は金曜日。
新橋の飲み屋街は多くのサラリーマンで賑わっていた。

いつもの居酒屋でプロジェクト終了の打ち上げ。

浅見さんと仕事を始めて丸二年目・・・

人数の割には浅見さん、大きな仕事を取って来るから、私達は毎回てんわやんわで、終わってみれば、なんとも言えない充足感で満たされていた。


「今夜は千晶さん、来ないんですか?」
私の半年後輩の梅原美知(ウメバラミチ)さんが浅見さんに投げかけた。

「千晶は今夜は来ない。昨日、二人目の妊娠が判明して・・・来ても、酒は飲めないから…欠席」

浅見さんがサラリと返すと私たちは騒然とした。

「おいっ!?なんで、今朝の朝礼で言わなかった??拓也」

須藤さんがお酒よりも先に来た付き出しの枝豆を食べる浅見さんに食ってかかった。

「忘れてたんだよ・・・」

「俺たちの給料は大丈夫か??」

「千晶のコトだ・・・ちゃんとしてくれてるって・・・」

アバウトな浅見さんとは違って、きっちりしている千晶さんのコトだから大丈夫だと私は思うけど。
千晶さんの体調の方が心配だった。


「給料の方を気にするのかよ!?陸翔は・・・」

「お前に任せたら、貰える物も貰えないからな・・・」

「・・・」

皆のオーダーしたお酒が揃ったところで、浅見さんが乾杯の音頭を取って、打ち上げが始まった。

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