御曹司は眠り姫に愛を囁く
雑踏の中に紛れ込んで行った浅見さんたちを見送る私と須藤さん。

私が二次会まで付き合う確率は三十パーセントと低い。
無理すれば、付き合えるんだけど、会話がね・・・


下ネタ話とかになると、表面上は笑いながらも、言葉が出ず、コミュニケーションが取れなくなる。

「須藤さんはどうして帰るんですか?」

「貴崎さんに話があって・・・」

須藤さんは照れ臭そうに後ろ髪に手をやり、掻きながら答えた。


「私に話?」

「そうだ・・・二人でバーで飲み直そう」


このまま、その場に立って居ても、他の人の邪魔になるだけ。

私は須藤さんの誘い通り、駅の構内を突き抜けて皆とは反対側のタクシー乗り場のあるロータリーに出た。

須藤さんは迷わず、タクシーを捕まえて、私と汐留に戻った。

タクシーから降り立つとそこは最近、オープンしたスポット・ハイアットビル・汐留の前。

下層フロアは商業施設やオフィス。中層フロアと高層フロアは三ツ星ホテルで有名な『ドラゴンホテル』と高級料理店。

最上階のレストラン&バーは会員制。

「どこに行くんですか?」

「あ・・・最上階のバー」

「えっ?」



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