御曹司は眠り姫に愛を囁く
ハイアットビル汐留は一度は足を運びたかった場所。

私は彼に案内され、エレベーターで最上階のバーを目指す。

「須藤さんの言うバーって・・・会員制ですよね・・・」

「大丈夫。俺が会員だから・・・」

須藤さんは浅見さんのようにプライベート全開の人ではなかった。
適当に冗談は言うけど、自分のプライベートは全く語らない人。

謎が多い人だったーーー・・・

浅見さんは『浅見設計』の御曹司。その友人の須藤さんも何処かの御曹司である可能性は高い。

御曹司と言えば、稜さんを思い出す。

金のある人とは二度とお近づきにはなりたくないと思ってたけど。

高速で夜空に向かって突き進むエレベーターの中。
最上階に到着した頃には耳の奥がおかしくなっていた。


「着いたよ」

「私の格好、バーに入れますか?」

「入れると思うけど・・・」

「オフィスカジュアルですよ!?」

「大丈夫。俺も同じだから・・・」

須藤さんの優しい笑みに副社長を重ねた。

噂では私が退職した後、椎名副社長はアメリカの大学に留学したらしい。

今はどうしているだろうか…今もアメリカに滞在しているのだろうか。

私は須藤さんと居ながら、副社長のコトを考えていた。

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