御曹司は眠り姫に愛を囁く
コーヒーを淹れると自分のデスクに戻って、パソコンの電源を入れて立ち上げた。

私は横浜芸術大デザイン科空間デザインコースを専攻、建築、インテリア、照明とトータルで勉強した。建築業界への就職も視野に入れて就活はしたけど、最終的には、インテリアや雑貨が大好きだったので、卒業後は『シーナ』に就職した。
そして、稜さんに出会い・・・『シーナ』を退職。
もしかしたら、休眠期間を終え、新しい恋愛を始めるかもしれない。

コーヒーを口に含みながら、マウスを操作して、昨日、修正しておいた『アイリス』の内装CGパースのデータをクリックする。

「須藤さん!!最終確認お願いします」

「分かった、今行く」

沢口さんと別の仕事の話をしていた須藤さんが話を途中で切り上げて、私のデスクにやって来る。

「どれ・・・」

マウスを包む私の右手に彼の手が被さった。

顔を近づけて画面を見つめる。

彼に手に包まれた右手が妙に熱い。

収まったはずの鼓動も高鳴っていく。

「修正は出来てるようだね・・・貴崎さん」

須藤さんは変わらぬ態度で接し、また沢口さんの元に戻ってしまった。

「なんだか・・・顔が赤いですよ??貴崎先輩」

そばで別の仕事をしていた若槻さんが私の顔を覗き込む。

「大丈夫よ…大丈夫」

私はお手洗いに行く振りをしてオフィスを出て、共有のお手洗いに駆け込んだ。


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