御曹司は眠り姫に愛を囁く
やっぱり、こんなセレブな雰囲気に慣れていない私には不釣り合いな場所だ。

はしゃいでしまい、笑われてしまった私は激しく落ち込んだ。

でも、お手洗いに長居も出来ず、個室に戻ろうと出た途端、眼鏡の彼が立っていた。

「気を悪くしたかと思って、様子を見に来たんだ…」

「私は別に・・・」

「・・・そう?」

眼鏡の彼は先に戻ろうと足を進めた私の左手を掴んで、自分のカラダに引き寄せて背後から抱き竦める。
今夜、初めて出会ったと言うのに、この馴れ馴れしいバックハグのスキンシップ。

私の中で警笛が鳴り響く。


「ねぇ、後で二人っきりにならない?」

耳許にワザと息を入れて囁く。

「は、離してください・・・」

「・・・嫌?」

「離してやれ・・・彼女嫌がってるぞ」


目の前には懐かしい副社長の姿。


「久しぶりだね。貴崎さん」

「椎名副社長・・・」

「君、昨日会ったね…『グローバル』の…確か・・・」

「『シーナ』の・・・」

彼は慌てて、私のカラダから離れ、皆の元に逃げてしまった。



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