御曹司は眠り姫に愛を囁く
思わぬ訪問者
私は二人に見送られ、タクシーで自宅マンションに帰宅した。

上京して住んでいるマンションは閑静な高級住宅街で有名な目黒区。
目黒川沿いにある『浅見設計』のデザイナーズタワーマンション『アーバンタワー中目黒』の17階の部屋に住んでいた。


狭いワンルームマンションに住んでいた私が普通に住める物件ではない。

浅見さんの父・『浅見設計』の浅見社長の計らいで住んでいた。

春は目黒川沿いにある桜並木が美しく見え、敷地内の庭も緑に溢れ、エントランスまでのアプローチは素敵だった。

「お帰りなさいませ」

フロントにはコンシェルジェが24時間常勤。

床はすべて大理石で、毎日ホテルライクのような生活を満喫していた。

部屋の鍵はカードキー。中に入ると自動で部屋に明かりが灯る。

リビングのソファに腰を下ろし、吐息つく。

脳裏に浮かぶのは支社長の姿。

――――彼の奥さんはどんな人だろう・・・

きっと彼に似合う美人で聡明な女性だと思う。

ソファの脇にあるのは支社長がくれたスタンド。

私の一番のお気に入りだ。

こんな広く、贅沢な部屋に住みながらも、置いてある家具は安物ばかり。

いつまで、住めるか分からないし。

私はスタンドの明かりを点けて、優しい月光のような光に包まれ、癒される。
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