御曹司は眠り姫に愛を囁く
来客用の地下の駐車スペースに行くと、白いベンツが停まっていた。

「乗って、貴崎さん」

椎名さんは助手席のドアを開けて、私が乗り込むまで立ってくれた。

「お手数お掛けします。椎名さん」

「いいんだよ」
ドアをゆっくりと閉めると、運転席側に回り込んで、椎名さんが乗り込んだ。

座り心地の良いシート。

ミント系の爽やかな香りが漂う車内。

「シートベルト締めて」


「え、あ・・・」

私は椎名さんの優しい声でハッと我に返る。

「すいません…すぐに着けます」

私は慌ててシートベルトを探す。


「分からない?」

彼は自分のシートベルトを外し、腰を上げて私のシートにカラダを向けて、シートベルトを引っ張り出す。


「後は自分でできます・・・」

「そう?じゃ、お願い、着けて」


彼は私がシートベルトを着けるまで待ってくれた。

私のもたついたせいで、時間を大幅にロス。椎名さんは急いだ様子でハンドルを切って、外に出た。


「すいません・・・」

「どうせ、俺の部屋だし」

「えっ?」

「陸翔から訊いていないの?リフォームするのは俺の部屋だ」

「へぇー」

「だから、お願いね・・・貴崎さん」


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