御曹司は眠り姫に愛を囁く
「でも、そろそろ相葉さんも休憩終わりだし、俺が呼んで来てやるよ」

副社長は私を一瞥すると「分かった。お前に任せる」と稜さんに返した。

「じゃ貴崎は要らないよね・・・1階に戻るぞ。貴崎」

「君にも仕事があったのに、俺の仕事に付き合わせてすまないね。貴崎さん」

「いえ」


副社長の隣で黙ったジッと待つ多忙な灰崎課長が気の毒だし、私は足早に稜さんとエレベーターホールに向かった。


私のセンスより、資格を持つ相葉さんのセンスの方が上。

「兄貴も隅におけないな。俺の居ない間に凛音に近づくなんて・・・」

「稜さんはどうなんですか?私、見たんですよ。相葉さんと一緒に居るとこ」


自分の不貞を棚に上げて、副社長にあらぬ嫉妬をするなんて、彼の身勝手な妄想に観音袋の緒が切れた。

扉の開いた金属の箱に乗り込んで、尚彼を詰った。

「何?俺と相葉のキス見たの?」

「見ました!!」

「ふうん」
彼は全部バレても、余裕綽綽の表情。


「私、もう稜さんとは付き合えません・・・」

「そっ、いいよ。別れても・・・俺には相葉が居るし」



< 7 / 171 >

この作品をシェア

pagetop