御曹司は眠り姫に愛を囁く
俺はリビングのソファに座らせ、彼女はキッチンに立ってコーヒーの準備。

ソファの右側には見たコトのあるスタンド。
俺が牛肉のアスパラ巻きのお礼でプレゼントしたスタンドライトだった。

「どうぞ」

黒のローテーブルにグラスに入ったアイスコーヒーが置かれた。

陸翔と共犯者になってしまった以上、俺は彼女を騙すしかない。

陸翔は彼女が俺に好意を寄せていると断言するけど、彼の勘違いだと思っている。


俺と彼女の今の関係はどうなるんだろう・・・
稜とは別れたし、会社も退職したし。

昔、働いていた会社の副社長。

―――でも、陸翔と彼女が付き合えば、彼氏の友人になる。

第三者的な繋がりにしかなれない俺たち。

俺は既婚者となり、陸翔は彼女の彼氏に。

稜と付き合っていた時と同じ言葉を繰り返したが、心は、あの時には感じなかった切ない思いで塗りつぶされた。


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