御曹司は眠り姫に愛を囁く

大規模再開発が終了し、新たに生まれた変わった品川駅とその周辺。元々、交通の便の高性能のオフィスビルが多く、この地に本社を持つ大企業は少なくない。『シーナ』は横浜に本社をおいているが、昨年から、東京に本社を移転させる計画が水面下で進行していた。

『シーナ』東京支社。
俺は支社長として、将来は社長として、本社移転の陣頭指揮を執っていた。


「支社長、本日のスケジュールですが・・・」

秘書の室雨航大(ﾑﾛｻﾒｺｳﾀﾞｲ）がスケジュール帳を開き、今日のスケジュールを伝えていく。室雨の曾爺ちゃんは俺の曾爺様の秘書だった。それから、室雨家は代々、椎名家とは所縁のある関係になった。
航大は25歳で、元は父の秘書。
父の命令で、俺の秘書に就いている。
高校時代は野球部で青春を燃やした元球児で、短髪で、爽やかな笑顔の似合う男。彼の欠点は猪突猛進な性格にある。


「室雨。いい物件は見つかったか？」

俺は部屋探しを室雨に任せていた。

「・・・支社長の希望する物件がなかなか見つからなくて・・・」

室雨も俺と共にして多忙の日々。そんな、仕事の合間を縫い、彼をに物件探しをさせていた。

「この際、賃貸でもいい。そうだな・・・目黒でもいいかな・・・目黒川沿いで、桜がキレイに見える場所がいいな・・・」

何て、俺は冗談めかしに、呟いた。


「わかりました！！目黒川沿いの賃貸マンションですね…急いで、探します！！」

「え、あ…室雨？？」

室雨は地獄耳なのか…俺の小声を聞き逃さなかった。

「俺は秘書室で仕事しています」

室雨は慌てて、自分のスマホを弄り、物件探しを始めた。

「冗談なんだけど・・・まぁ、いいっか・・・」