御曹司は眠り姫に愛を囁く
室雨は部屋のカードキーを渡して、帰ってしまった。


俺はスーツケースを引きずり、今日から俺の住処となる貴崎さんと同じ高級マンションに入っていった。

部屋に入ると標準仕様のセンサー付きの自動灯火、電気とガスの水道の開通も終え、生活できるようになっていた。

室雨に任せた割には家具の配置も俺の希望通り。

俺は軽くため息を吐き、リビングのソファに腰を下ろす。

「さてと・・・まずは貴崎さんに挨拶しようか」

俺はスーツケースを開けて、お土産用に買ったブランド物の香水の入った紙袋を取り出す。

貴崎さんに似合うと思い、購入した甘い花のような匂いのする香水。
気に入って貰えるだろうか・・・

腰上げて、早速、貴崎さんの部屋のインターホンを押した。

「はい？どちらさまですか？」

「隣の部屋に引っ越してきた。椎名です」
鼓動が緊張で高鳴るが、表向きは平静を装い、彼女がドアを開けるのを待った。

「椎名さん・・・出張から帰って来たんですね・・・」

「つい、先ほど・・・」

彼女は俺が隣に引っ越して来たコトを不審に思っているだろう。

「お疲れ様です」

「あ・・・これ・・・フランスの土産です」

「上がって下さい・・・お茶でも出しますよ」

「いや…別に・・・」

「遠慮しないでください。椎名さん」

「じゃ、お言葉に甘えて・・・」


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