World End 〜七情の泉〜
無意識に握られた手に力が入る。手のひらに爪が食い込んでいく。じわじわと広がる痛みに悲しくなった。



「失礼いたします」

「え__!?」



ローゼンバーグは昨夜と同じように翼を横に抱き上げた。昨夜と違い疲れも眠気もない翼はバタバタと暴れ抵抗した。


日々の訓練で鍛え上げられた逞しい身体はビクともしない。小柄で華奢な翼が暴れたところで、ローゼンバーグにとっては小動物が暴れているのとなんら変わらない。



「降ろして下さい!!」

「足の傷が悪化してしまいますから、このままベッドへ運ばせていただきます」



優しい言い方ではあるが、有無を言わせない空気を出され、翼は不満そうに唇を尖らせた。そんな2人の様子を興味津々に見ている警備兵と、不安そうに見守っている侍女。


侍女はハッとなり、翼が横になれるように慌ててベッドを整えた。瞬時に整えられたベッドの上に降ろされた翼は、寝転がらずに上半身は起こしたままフカフカの枕をクッションがわりに腰掛けた。



「巫女さまをお呼び致しますので、こちらでお待ち下さい」

「…………」



返事をする気にはなれず黙っていると、ローゼンバーグは笑顔を崩さないまま軽くお辞儀をし、部屋から退出した。侍女は温かいお茶を用意すると、気配を消すように扉近くの壁際に直立した。


翼はティーカップを口元に持っていき飲む前に「はー…」とため息を吐いた。今の自分の状況を知りたいようで知りたくない……そんな心境になっていた。





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