World End 〜七情の泉〜
澄み切った空と活き活きしている草原と不釣り合いな世界を映し出している球体。泥水の様な泉や墨の様な泉。泉の周りの空気は淀み、草木は枯れ果て、生き物の姿はない。そんな世界を救いたいという想いよりも“1つだけどんな願いでも叶える”というガイアの甘い言葉が翼の心を揺るがせた。


帰りたい気持ちしかなかった心に、甘美な誘惑が入り込む。



「大好きな姉との仲を取り戻したくはないか?」

「っ__!?」



何よりも悩んでいた姉との仲。どんなに疎まれようと、嫌いになれなかった。また仲良くなりたいと何度思ったか分からない。


翼の心の中はお見通しだった。



「お姉ちゃんとの仲を元に戻せるって言うの?」

「容易い事だ」



ガイアの言葉が翼の耳にハッキリと届いた。葛藤する想いが1つになろうとしている。



「ほんとに……ほんと……?」

「嘘は言わぬ。 約束は守る。 正直願いなど何でもいい。 そなたが全ての泉を浄化し終えた時、また改めて聞くとしよう。 それで? 答えを聞かせてもらおうか?」



もう既に答えなど分かっているという様な口調だ。それでもガイアは翼に問う。それがとても重要だとでも言うように。


翼の両手はワンピースをクシャリと握りしめた。そして意を決した様に唇を動かした。



「やる! 約束破ったら絶対許さないから!! 全部キレイにしてさっさと元の世界に帰ってやるんだから!!」

「では、交渉成立だな」



ガイアは一瞬にして翼の目の前に移動し、右手の指先で翼の額へそっと触れた。



「選ばれし少女_ツバサ、そなたにほんの少し我の力を授けよう。 いつどの様に使うかはそなた次第。 さぁ、行ってくるがいい…己の願いを叶えるために……」



暖かな光に包まれ、ツバサの意識が遠のいていく。意識が途切れる瞬間溢れたガイアの言葉は、ツバサの耳に届くことはなかった。


ツバサの姿がなくなり草原にただ一人残されたガイア。



「生き延びろ……ツバサ……そなたがそなたの願いを果たすために……」



ガイアは雲ひとつない空へ向かって囁いた。その時も微かに笑みをこぼしていた。





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