ケモノ系ケモノ型男子。
バスで片道2時間。
都会に出て大きな会場が見えてきた。
会場の中に入ると先に来ていた他校の生徒が結構集まっている。
「うあぁ……まただ」
会場に着くなり身震いをする梶村くん。
「どうしたの梶村くん?」
「なんか俺…こういう大会の会場に着くといつもすごい目線を感じちゃうんだよね…」
梶村くん…多分それは違うと思うよ。
他校の生徒の中から女子の声がひそひそと聞こえてくる。
「え!あの人ってもしかして森ノ宮の白王子!?超イケメンじゃんー!」
「じゃあ隣にいる黒髪のクールな人は黒王子かな!?やばいどっちも超イケメン!!」
「ねえ今度こそ連絡先聞いてきてよー!」
梶村くんが感じているのは敵意じゃなくて好意だと思います。
黒王子と囁かれていたこーくんは全く気にせず、1人でストレッチを始めていた。
「待ってなにあの子超肌しろーい」
「森ノ宮で初めて見る顔かも。1年かな?」
「可愛い〜♡名前なんて言うんだろう?」
…………多分薫くんのことだよね。
「森ノ宮の1年、斉藤 薫で〜す!よろしくね!」
「きゃーー!可愛いー!!」
薫くんが手を振った方向に黄色い悲鳴があがる。
「はーまいっちゃうなー。愛想振りまくのも大変だよー」
どの口が言ってんだか!
すると、他校の女子の中から前野先輩を褒める話が聞こえてきた。
「あの人って森ノ宮のキャプテンかな?なんか大人の感じがして素敵〜」
ふふん、そうでしょう!そうでしょう!
前野先輩は気高くて凛々しい大人の男の人なんですから!!
って何勝手に喜んでるだろう私。
「そろそろ始まるからトイレ行っとけよ」
前野先輩がそう言うと私を含めて何人かの部員がトイレに向かった。
梶村くんとこーくんはトイレに行かずただストレッチを続けていた。
「わー混んでるー」
観客席から近いトイレは長蛇の列でとても間に合いそうになかった。
仕方なく他をあたる。
「あった!」
観客席から少し遠い場所にあるトイレを見つけ、
周りに誰もいないので並ぶことなくトイレを済ませることができた。
「急がないと…!」
ここから観客席まで少し遠いから走って行くしかない!
来た道を戻って曲がり角を曲がった所に、
まるで私を待っていたかのようにその人は壁にもたれかかってこちらを向いた。
「きー…ちゃん?」
今大会の優勝候補梅沢高校のエース、
獅子王キラがいた。