遠距離の彼 と 近距離の同期
「あ…」

ドアの向こうにいたのは、宅配屋さんではなく、天だった。

私は慌ててドアを閉めようとしたが、天にドアを掴まれて無理矢理中に入られてしまった。

「結、何があった?」

天が親指で私の頬の涙を拭う。

「お願い。帰って。」

私はそう言って、天を押し返そうとしたが、天はビクともしなかった。

「結、話して。何があった?」

私は何も言えなくて、ただ首を横に振った。

「結、ゆっくりでいいから。
話せる事から話して。
座って、落ち着いて話そう?」

天はそう言うと、靴を脱いで、私の肩を抱いて部屋に上がった。

私は天に促されるまま、ローテーブルの前に座り、さっきまで眺めていた妊娠検査薬が置きっ放しな事に気付いた。

私は慌ててそれを掴んだが、私がそれを隠すより早く、天が私の手首を掴んだ。
< 127 / 284 >

この作品をシェア

pagetop