政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています
私は着ていたモッズコートを脱いで、彼に渡した。ありがとうと言いたかったのに、声に出せなかった。なにか言葉にしたら涙が落ちそうで、私はただ唇をかみしめて、無言のまま彼を見上げた。
モッズコートを羽織った彼は、なにも口にできないでいる私に微笑んでくれた。まるですべてをわかっているみたいな、包み込むような瞳で。
指が長くて節の目立つ、女の子のそれとはあきらかに違う大きな手が、ゆっくり私の左手を取る。
「Goodnight, my Princess.」
――おやすみ、僕のお姫様。
手首に、しゃらりとゴールドの鎖のようなものを巻きつけられた。
金具を留めると、彼はやさしく私の手を引き寄せ、甲に唇をつける。
まるで本当の王子さまみたいに――。