政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています

「Your happiness is always wished.」

 ――君の幸せを、いつも願っているよ。

 冷えた唇の感触と、自分の手首を飾るパールがあしらわれたゴールドのブレスレットに意識を奪われているうちに、彼は私から離れ、通りを渡ってしまった。

「あ……」

 モッズコートの背中が、どんどん遠ざかっていく。

「待って……」

 お礼を言う間もなかった。

 それどころか、名前すら聞いていなかった。

 私の胸に自由と甘い恋心を植え付けたその人は、マンハッタンのビルの向こうに、あっというまに消えてしまった。




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