政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています
以津子さんが、思い出すようにうっとり言う。
「すらっと背が高くて、顔が整ってて、品があって、外国の王子さまみたいでしたよ」
この家に挨拶をしに来たときのことを思い出していると、母が以津子さんを振り返った。
「そうなの? 私はあまり話せなかったのよね。すぐ帰っちゃったし」
「口調がおだやかで物腰も柔らかくて、優しそうな方でしたよ」
「そう……でもそんな人に限って腹ではなにを考えているか……」
職業柄、さまざまな人間を見てきた母は、そんなことをつぶやいてから、はっとしたように私を見た。
「あ、ごめん。飛鳥井さんがそうってわけじゃ」
「ふふ」
取り繕う母のあわてぶりに笑ってしまった。