政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています
✿ドレスコードに涙の宝石
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「――以上で研修は終了です。おつかれさまでした」
二十人を収容できる会議室から、中年の男性たちが目に鱗という表情でぞろぞろと出ていく。
ホワイトボードを消してから、私は帰り支度をしているスーツの男性に声をかけた。
「星崎先生、今日はありがとうございました」
「いや、桜井先生の頼みならこれくらい。それにしても真珠ちゃん、立派になったね」
四十代の彼は、仕事では旧姓を名乗っている母の事務所に勤めていて、小さい頃に何度か顔を合わせたことがあった。彼の中ではきっと私は小学生のままだろう。
苦笑しながら出入り口まで見送ろうと振り返ると、フロアの後ろに立っている人物が目に入った。長身を壁に預け、腕組みをしてこちらを見ている。