政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています
どきりと胸が鳴った。優しく崩れる表情に、初恋のあの人の笑顔が重なる。そう考えてから慌てて思い直した。
ああ、違う。本人だ。
十年前のモッズコートの彼は、今目の前にいる婚約者で……。
あまりにもたくさんの秘密が明かされて、私の頭はそろそろ限界らしい。
古い映画の中に張り巡らされた伏線のように、複雑で、入り乱れていて、気を抜くとこんがらがってしまう。
私の婚約者は、飛鳥商事の御曹司、飛鳥井迅。三十歳。
ニューヨークで私に自由を見せてくれたのは、彼本人だった。
そして彼にはふたつ年下の、尋という弟がいて、私の誕生日前に伯父を介して実際に顔を合わせたのは、尋さんの方。
それから迅は、私が勤める会社の社長として、私の前に現れた――