政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています
はっとして、私は顔を上げた。真剣なまなざしを向けると、彼は不思議そうに眉を持ち上げる。
「鷹野迅……」
私のつぶやきに、彼はわずかに表情を崩した。
「やっと、気づいたか」
「……どうして、鷹野なの?」
鷹野迅は、飛鳥商事の執行役員で次期取締役と噂されていると、確か安西五郎先輩が最初に教えてくれた。
今、目の前にいる飛鳥井迅は、飛鳥商事でもホワイトモールでも別名義で働いている。公には『鷹野迅』と名乗っているのだ。
すべての混乱の原因は、そこにある。
私の視線を余裕の表情で受け止めて、彼はいたずらっぽく笑った。すっと伸びた指先が、私の唇をそっとなぞる。
「同じだよ、真珠と」
「え――?」