政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています

「当然だよ。まだ君は十歳だったんだから」

 やさしくフォローをしてくれる彼の横顔をこっそり盗み見た。

 端正な面立ちや、顔の輪郭を手掛かりにするように、十五年という年月に埋もれかかっていた記憶をどうにかひっぱり出す。

 本当は、少しだけ覚えている。

 それは、伯父が暮らす白鳥本家の広い庭で、妹と一緒に人形遊びをしているときの光景だ。

『真珠』と呼ばれて振り向くと背広姿の伯父がいて、そのとなりに学生服を着た知らない男の人が立っていた。

 ……ひどく驚いたような顔で。

『お前の許嫁だよ』と言った伯父の言葉は覚えているけれど、その意味はわからなかった。

 となりの椅子にゆったりと座って長い脚を組んでいる飛鳥井さんを、もう一度見る。

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