政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています
どことなく遠い目をしている彼は、政略結婚があたりまえの世界で生きている。だからこそ、きっといろいろな形の結婚を見てきたのだろうなと思った。
「会社では、桜井と名乗っているんだって?」
「ええ。母の旧姓です。周りの人に白鳥の名前を知られるのがいやで……」
そこまで言ってからはっとする。となりに座って私の話を聞いている彼は、自分の父親が社長を務める会社で、自分の性をありのまま名乗って働いているのだ。
「す、すみません」
「いや、謝ることはないよ。君の正直な気持ちでしょ。僕も飛鳥井はやめておけばよかったな」
そう言って微笑む彼に、含むところは見当たらない。
人を疑うことを知らないような、穏やかな目だ。それは同時に心の余裕を表している気がした。