政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています

 何不自由のない環境で育ち、英才教育を与えられ、将来の伴侶まで決められながら、彼はそのすべてを受け入れているのかもしれない。飛鳥井の家に生まれた人間として。

 きっと、悪い人ではないのだろう。

 さっきは温室育ちなんて思ってしまったけれど、警戒心に凝り固まった私の気持ちをわかった上で穏やかな空気にしてくれているし、押しつけがましいところもない。

 でも。

 現状を打破しようという野性味みたいなものは、やっぱり感じられない。

『俺はおまえの味方だ』

 ふいに鋭い目を思い出して、心臓が音を立てた。

 なぜ今、あの人が頭に浮かぶのだろう。

 どうして、飛鳥井さんを、あの人なんかと比べているのだろう。

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