政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています
「それじゃあ、私はそろそろ失礼するよ」
「あら、もうお帰りになるんですか? もっとゆっくり……」
「いや、やることが溜まってるんでね」
そう言って背中を向ける伯父が、実は母を苦手としていることを私は知っている。
女は夫を支えることが仕事で家のことだけをやっていればいい、という前時代的な考えの持ち主である彼は、結婚後も弁護士として忙しく働いている母のことを快く思っていない。
のしのしと熊のような風体で玄関に向かっていく伯父と、対照的にすらりと背が高くスタイルのいい飛鳥井さんを、母とふたりで玄関まで見送った。
靴ベラを使って革靴を履いている伯父より一足先に靴を履くと、飛鳥井さんは振り返った。一段低いところにいるのに、目線が私と変わらない。