政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています

「飛鳥井くんの相手は、お前じゃなくて珠里でも」

「わかっています!」

 思わず声を荒げてしまった。

 刺すような目で私を睨み上げると、伯父は飛鳥井さんとともに玄関を出ていった。通りまで見送るつもりなのか、母親がパタパタと後をついていく。

 ひとり残された玄関に立ち尽くし、体の内側で瞬間的に上昇した熱を吐き出すように、ぽつりと口にする。

「身ぎれいにするような人間関係なんて……」 

 誰にともなくつぶやいた声は、黒御影の玄関床に落ちて砕け散った。







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