政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています
「ほら、さっさと降りろ」
躊躇していたら、肩を抱かれるように押し出されて、一瞬呼吸を忘れた。
セキュリティゲートを抜けた後も彼は私の肩をつかんだままで、大きな手の感触に心臓の音が高くなっていく。
前を歩く戸上さんが、車寄せに停まっていた光沢を放つクラウンに近づく。運転手の男性と短く言葉を交わすと、後部座席のドアを開けて鷹野社長を乗り込ませた。
開かれたドアの前で戸惑っている私に、戸上さんは静かに言う。
「どうぞ、お乗りください」
黒いフレームのメガネの奥で、瞳はなにも語らない。
会社でもごく一部の人しか知らない私の出自を、この人は知っている。けれど、よくも悪くも、それを態度に出すことは絶対になかった。