政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています
事情に明るいほかの人たちのように、どうせお嬢さんの社会科見学だろうと冷たい目で見てきたり、かごの中の不自由さを憐れんだりする様子は微塵もなく、普通の社員にそうするように、ただ淡々と私に接する。
風のない日の湖面のように深い静けさを湛えた目をしている戸上さんは、なにを考えているのかまったくわからない。
敵なのか、味方なのかも――。
「真珠!」
車の中から低い声が放たれて、はっとする。
「す、すみません」
あわてて鷹野社長のとなりに乗り込みシートベルトを留めると、車は寡黙な社長秘書を残して走り出した。
「それ、見せてみろ」
エンジン音すら聞こえない静かな車内で、鷹野社長は私に手を差し出す。