政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています
「は、はい。すみません」
引力のある真っ黒な瞳から急いで意識を引きはがし、自分の資料に目を落とした。
心臓を落ち着けるように一呼吸おいて、あらかじめ頭の中に用意してあった言葉を口に出す。
「まず、WLB自体の意義を浸透させることが必要だと思ったので、外部の専門家を招いて全社員向けの講習会を行います。講師の候補はここにリストアップしたなかから」
「こいつは俺の知り合いだ」
となりから伸びてきた長い指が差した人物に、「えっ」と声が漏れた。
それはテレビにもよく出演しているという、芸能人なみに知名度のある有名コンサルタントの名前だった。うちの会社が呼べる人物だとは思っていなかったから、あくまでイメージとしてリストに載せていただけの。