政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています

 ばさりと私に資料を戻して、鷹野社長は無表情のまま視線を前に向けた。

「その企画書自体はそんなに悪くない。どんどん進めろ。必要があればサポート要員を用意させる」

 突き放すような言い方で、激励するようなことを言う。そのちぐはぐさに、なんだか肩の力が抜けた。

 感情を排除した相手を見透かすような目の奥に、なんとなく熱いものを感じて、私は返された資料に目を落とす。ほんの少しよれた書類を見ていたら、ふいに先週の社長室での出来事を思い出した。

『真珠――』

 名前を呼ばれ、抱きしめられた感触がよみがえって、心臓が反応する。

 自分の鼓動に飲みこまれないようにファイルを握りしめて、運転席の後ろにゆったりと座って窓の外を眺めている社長をそっとうかがった。

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