政略結婚!?箱入り令嬢は俺様社長に愛でられています

 日本人離れした体格にぴたりと合ったスーツはおそらくテーラーが仕立てたフルオーダー品だ。袖口からのぞく高級時計は嫌味のない上品なデザインで、長い脚は膝の位置が恐ろしく高く、私と同じ人種だとは思えない。

『安心しろ、俺は敵じゃない』

 あのとき、この人は、どうしてあんなことを――。

 気がつくと車が停車していた。運転手が外を回り、私の傍らのドアを開ける。

「着いたぞ。降りろ」

 ぼんやり考えごとをしていた私を現実に引き戻すように、鷹野社長は微かに笑みを浮かべてシートベルトを外した。








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