【中完】彼女なんて辞めてやる。
『え……?』

「俺と付き合う前は、一緒に登下校してただろ?」

『うん……、まぁ、家近いし。』

日向とは小学校、中学、高校と一緒に来てはいた。だけれど、それだって浅岡 樹と付き合い始めてからは辞めた。

まぁ、必然的にそうなるわな。

「だから俺は、雪乃が好きだって思ってから告白した。日向に取られたくなくて。

確かに雪乃は俺を選んでくれた。だけど、不安になることが多かったんだ。

……本当に俺のことが好きなのかって。」

そうか。私は浅岡 樹に近づく女の子を見て最初は不安になった。だけど直ぐに諦めてしまった。

それよりも長く君は、その不安を隠して出さなかったのか。だけどさ、その気持ちがこじれてあんな浮気っぽいものに出るなんて、笑っちゃうよ。

『……好きだったよ。ほんとに。

ほんとに、大好きだった。』

後ろの夕日が少し眩しい。浅岡樹の髪の毛が茜色の光に照らされ、チリチリと光っている。

私の前に、浅岡樹の影が伸びる。

逆光で見え辛くなってしまったけれど、確かに分かった。

浅岡 樹が、悲痛そうな顔をした。表情筋を動かして悲しそうな、辛そうな顔をした。

見るこちらまで苦しくなってしまいそうな笑顔で、それでも、笑った。
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