君の隣は。
とある朝。


私の朝は不規則だ。



閉じていた瞼の隙間から、差し込みあまりのまぶしさに意識が浮上する。
次に感じたのは……コーヒーらしき匂い。
重たい瞼を瞬きさせながら、目を開けるとカーテンが開けられている。

(ああ…今日も来てる)

そう思いながら、マメな「彼」が来ていることにクスリと自然と笑みがこぼれてしまう。

身体を起こし、腕を上げて軽く伸びをする。

そこまですると意識は完全に覚醒し、彼がキッチンで料理をしている音を聞き、ベッドを抜けて足をそちらに向ける。
廊下を通り、ダイニングへの扉を開ける。

その音に反応した彼がこちらを振り返り、目が合うと笑顔を向ける。


「おはよう、ユキちゃん」

「おはよう、イチさん。
 今日はパンなんだね?」

彼の手元をのぞき込むように見ると、耳のない食パンが置いてある。

「中身の具はもう作ってあるから、あとは入れるだけ」

「おー、準備がよろしいことで」

「はいはい、ユキちゃんはつまみ食いする前に、顔ぐらい洗ってきてください」

具材であろう卵の入ったお皿に手を伸ばそうとしたら、イチさんは呆れた表情をしながらお皿を私から遠ざけた。

「……ケチ」

「なんとでも」

イチさんの様子から本当につまみ食いはさせないようで、私は諦めて洗面所へ向かう。




イチさんという「隣人」が私の朝食を作りにきてくれる。
これが私に不規則な朝だ。



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