君の隣は。
顔を洗ってきた私にイチさんは思い出した様子で言う。
「ユキちゃん、ストレッチは?」
「あ…」
「早くしないと、朝ご飯が抜きになっちゃうよ~」
朝ご飯を抜きにするのは、私の仕事上においてよろしくない。
わかっていて言う彼に無言でティッシュ箱を投げつける。
ソファーに座り、後ろで腕を組む。
そのまま腕をあげてソファーの背もたれから3~5cmあがったところで10秒ほどキープする。
ここでのポイントは前をまっすぐ向き、背筋を伸ばすこと。
あとはゆっくりと腕を下す。
これは肩甲骨をほぐしてくれる。
「あ、メガネさんが電話で入り時間が1時間早まったって言っていたよ~」
「え、嘘でしょ…。
言うの遅くありませんか、イチさん?」
「ちゃんと電話をもらってすぐに起こしにいきましたよ、ユキちゃん?」
「それは……覚えていません」
「はやく終わらせて、食べてね」
これは本当に早くストレッチを終わらせないといけない。
予定とは少し早めにストレッチを切り上げて、再び顔を洗いに行く。
朝ご飯のために席に着くと、キッチンからイチさんがサンドイッチを持ってきてくれた。
卵サンドにヨーグルト、フルーツにコーヒー。
フルーツは毎日種類が変わる。
(本当にマメだな~)
彼といると自然と笑みがこぼれることが多いようだ。
「なに笑ってるの?」
「べつにー?
ただ、イチさんは真面目だなーって!」
そんな私の脈絡のない返答に不思議そうな顔をするイチさん。
今日も美味しい朝ご飯、いただきます。