おはようからおやすみを笑顔で。
しかもうっかり、

「……ちょっと違うな」

と声に出してしまった。

そのせいで、男性は眉間に皺を寄せ、明らかに不機嫌そうな表情で「何がだ」と聞いてきた。声が低くて、目付きも鋭くてちょっと怖い。
だけど、その切れ長の瞳、長い睫毛、キリッと整った眉、スッと筋の通った高い鼻、形の良い薄い唇……世間一般的にはかなりのイケメンだと思う。だからつい、〝違う〟と声に出してしまったのだ。年齢は近そうだけれど、カッコ良すぎる人は探していないから。


「あの、何かすみません」

「謝らなくていいから何が違うのか理由を言え」

「えっ」

「俺ははっきりしない奴が嫌いなんだ」


え、えぇー! 何この人! いや、まぁ元はと言えば私が悪いんだけど! だけどここまで突っかかってくる⁉︎ 目付きも怖いし、もしかしてチンピラ⁉︎ ヤクザ⁉︎


「……って。お前、もしかして……」

「え?」

男性が何か言い掛けた気がしたけれど、その時、
「斉野さん、お待たせしましたーっ」と、
本屋の中から男性が一人、出てきた。

彼も私と同い年くらいか、もしくは少し年下かな?
目がくりっとしていて可愛らしい。
イケメン過ぎず、顔だけなら私の求めていたそのものという感じだけれど、身長が少し低めだ。


「いやーっ、欲しい雑誌が今日発売日なの忘れてて! あれっ、その女の子、誰ですか?」

可愛らしい男性の視線が私に向けられる。
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