おはようからおやすみを笑顔で。
ーー小学四年生の時のクラス替えで、斉野君とは初めて同じクラスになった。
六月の席替えでたまたま隣の席になった辺りから、斉野君は私に意地悪をしてくるようになった。
消しゴムを頭に投げ付けてきたり、髪を引っ張られたり。
担任の先生に『斉野君が嫌なことをしてきます』と相談したことはあったけれど、斉野君は私以外の人の前では品行方正、おまけに成績優秀という優等生の模範のような存在だったため、先生は私の主張なんて信じてはくれなかった。
それだけならまだ我慢出来た。しかし、五年生に進級した頃、私はクラスの女子数名から裏庭に呼び出された。
『あんた何で斉野君から特別扱いされてるの?』
『みんな斉野君のこと好きなんだからね』
『勘違いすんなよ、ブス』
酷い言われようだった。
好きでもない男子から意地悪されて、そのことを他の女子達から疎まれていたのだ。
この日を境に、私はクラスの女子達からも意地悪をされるようになってしまった。
だから斉野くんはまさに私の天敵だった。
朝の〝おはよう〟すら言いたくないくらいの存在だった。