おはようからおやすみを笑顔で。
【お掛けになった電話番号は現在使われておりませんーー】
何度掛けても、電話は繋がらない。どうして? たった一日前までは繋がったのに!
疑いたくはないけれど、確認せずにはいられない。繋がらない電話を何度も何度も掛け直しながら、彼の家まで向かう。
キャッシュカードも通帳も印鑑も、昨日仕事から家に帰ってきた時は確かにあった。その後、私以外で私の家にいたのは、深夜に泊まりに来たあの人だけだ。
結局、電話は一度も繋がることがないまま、彼の家に到着した。
……正確には、〝彼の家であるはずの場所〟だ。
「嘘でしょ……」
彼から教えてもらっていた住所にやって来たのに、そこはどう見ても空き家。開きっ放しだった玄関の扉から家の中を覗くと、家具も生活用品も何もない、人が住んでいるとは思えないすっからかんな状態だったからだ。
近くを通り掛かったご近所さんと思われる男性が「どうかしましたか? そこの家はずっと前から空き家ですよ」と丁寧に教えてくれた。
はは……やられた。
木本 沙耶(きもと さや)、二十六歳。恋人(だと思っていた人)から詐欺に遭いました。