おはようからおやすみを笑顔で。
「リョウくん……」

名前を呼びながら、一歩彼に近付く。

完全に姿をくらましたと思っていたから、こんな所で会えるなんて驚きだ。


逃げてしまわれないように慎重になる私に、なんと彼の方から歩み寄ってきた。
そして。


「沙耶、ごめん!」

突然頭を下げられて、私は「え?」と口を開いたまま何度も瞬きするしか出来ない。


「俺、これから沙耶に会いに行こうと思っていたんだ」

「え?」

「沙耶と話がしたくて。沙耶には本当に悪いことをした。お前の大事な持ち物を勝手に持ち出して、最低だよな」

「リョウくん……」

私は首を左右に何度も降る。
最低なんかじゃない。だって私に会いに行こうとしてくれて、更にこうして謝ってくれた。

私、リョウくんに捨てられたと思って悲しかったけれど、きっとそんなんじゃない。
私の通帳とかを持っていったのは、やっぱり何か理由があったんだ!


「リョウくん、会えて本当に良かった。もう会えないと思っていたから泣きそうだよ」

「ごめん。不安にさせたよな」

「ううん。でも、通帳を持っていった理由は教えて? あと、引き出した五十万円も返してもらいたいんだけど……」


すると彼は突然、両手を私の両肩に置き、グッと力を込める。


「リョウくん?」

「聞いてくれ、沙耶。俺は騙されたんだ」


……ん?
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