おはようからおやすみを笑顔で。
「あんな言い方されたら、お前が危険な目に遭ってるんじゃないかと気になるだろうが」


え、聞き間違いかな? 斉野くんが……あの斉野くんが、私を心配してくれたっていうの?


「ていうかお前はちょっと黙ってろ」

そう言うと彼は、私を一歩後ろに下がらせ、リョウくんと対面する。


「な、何だよお前……」

リョウくんも、斉野くんの威圧的なオーラにたじろぎそうになっている。


「今のあんたたちの会話、しっかり聞いた。だが、まずは木本に金を返せ。あんたの詐欺被害についての話はそこからだ」

「は、はあ? 部外者のお前に、何でそんな警察みたいなこと言われないといけないんだよ!」

リョウくん、斉野くんが警察官だとは思っていないみたいだ。まあ彼の風貌からじゃあ、それも仕方ないと思うけれど……。


「ていうか、お前は沙耶のなんなんだよ! ただの知り合いなら引っ込んでろ!」

「木本のなにって聞かれると、俺はこいつの同級生」

「同級生? わかったぞ、お前、沙耶のことが好きなんだろ? 俺と沙耶がちょっと擦れ違っていたのをいいことにあわよくば……とか思っていたんだろうが残念だったな。俺と沙耶は恋人同士なんだから諦めろ」

リョウくんが、とても失礼な発言を斉野くんに連発していく。

だけど斉野くんは怒る様子もなく、寧ろ「フッ」と鼻で笑った。


「な、なに笑ってんだよ」

「あわよくば、なんて考えてねえよと思ったらおかしくてな」


そりゃあそうだろう。斉野くんが私とどうこうなりたいなんて考えていたら、天変地異の前触れレベルだ。


……そう、思っていたのに。


「きゃっ」

斉野くんが突然、私の肩を自分の方へと引き寄せる。
私の身体と彼の身体が密着し、突然のこの状況に、私は目を見開いて何度も瞬きを繰り返す。
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