おはようからおやすみを笑顔で。
「あわよくば、なんて考える必要はない。どんな状況だって、自分が欲するものは自力で奪うからな」


奪、う……? 誰が、なにを?



「あんたが木本の彼氏だって関係ない。こいつは、十三歳の九月十二日から俺のもんなんだよ」



九月……十二日……。


それって、斉野くんが私にウソ告白した日……。

何で日にちまで覚えてるの? ただ意地悪しようとしただけだよね?


まさか……



まさかあの告白は本当の……



「な、なにわけわかんねえこと言ってんだよ! 沙耶、行くぞ!」

リョウくんが苛立ったような焦ったような表情で私に手を伸ばす。


……でも、私はそれを無意識に跳ね除けてしまった。


「沙耶?」

「あ、私……」


本当に無意識だった。
リョウくんが驚いた顔をして私を見つめるけれど、私も自分自身に驚いて戸惑う。


……でも、はっきりと気付いたことが一つだけある。


「リョウくん……ばいばい」

目を見開いて、口を半開いたまま私を見つめるリョウくん。
このまま彼の彼女でいたって、きっとまた軽く裏切られる。
その度に傷付いて、だけど謝られるたびに許してしまう。
私が変わらなければ、この先もきっと何度も苦しむだろうって気付いたから、彼とは別れなければいけない。
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