おはようからおやすみを笑顔で。
その後、騒ぎが大きくなる前になんとか二人をあの場から移動させた。
そして、リョウくんは近くのコンビニのATMで五十万円をおろしてきた。浮気相手の女性に渡すためのお金を私から盗むくらいだから彼に貯金はあまりないようだけれど、たまたま昨日が給料日だったため、私に返すだけのお金はギリギリあったらしい。
おろしてきたばかりのお金を、封筒に入れることもなく私に突き出してきた彼は、
「くそっ! お前みたいな女、もう二度と会わねえよ!」
という言葉を吐いた後、私の通帳とキャッシュカードと印鑑もこちらへ投げ捨ててきて、そして走り去った。
「追い掛けるか?」
斉野くんが、さっきほどではないけれど怖い顔でリョウくんが走っていく方を見つめながらそう言う。
なんとなくだけれど、斉野くんなら本当に追い掛けて捕まえてもう一度背負い投げしそうだと思ったから慌てて「いや、いいから!」と答える。
「本当にいいのか? お前自身が被害届を出さないと、警察もなにも出来ないんだが」
「うん、いい……」
私の足元に捨てられた通帳たちを拾い上げてから、私は首を縦に振った。
付き合っていた頃に貢がされた訳ではないし、暴力を受けたこともない。
知らないところで浮気はされていたみたいだけれど、被害らしい被害と言えばこれらの盗難だけ。
それが戻ってきたから、もういい。
彼も被害者だから、なんて庇うつもりはないけれど、早く忘れたい。そう思った。
そして、リョウくんは近くのコンビニのATMで五十万円をおろしてきた。浮気相手の女性に渡すためのお金を私から盗むくらいだから彼に貯金はあまりないようだけれど、たまたま昨日が給料日だったため、私に返すだけのお金はギリギリあったらしい。
おろしてきたばかりのお金を、封筒に入れることもなく私に突き出してきた彼は、
「くそっ! お前みたいな女、もう二度と会わねえよ!」
という言葉を吐いた後、私の通帳とキャッシュカードと印鑑もこちらへ投げ捨ててきて、そして走り去った。
「追い掛けるか?」
斉野くんが、さっきほどではないけれど怖い顔でリョウくんが走っていく方を見つめながらそう言う。
なんとなくだけれど、斉野くんなら本当に追い掛けて捕まえてもう一度背負い投げしそうだと思ったから慌てて「いや、いいから!」と答える。
「本当にいいのか? お前自身が被害届を出さないと、警察もなにも出来ないんだが」
「うん、いい……」
私の足元に捨てられた通帳たちを拾い上げてから、私は首を縦に振った。
付き合っていた頃に貢がされた訳ではないし、暴力を受けたこともない。
知らないところで浮気はされていたみたいだけれど、被害らしい被害と言えばこれらの盗難だけ。
それが戻ってきたから、もういい。
彼も被害者だから、なんて庇うつもりはないけれど、早く忘れたい。そう思った。