おはようからおやすみを笑顔で。
隠れ選択肢③
「いらっしゃいませー」
「申し訳ございません。順番でご案内しておりますので、番号札を取ってお待ちくださいませ」
私が前日に詐欺に遭ったからといって、職場にも世間にも当然ながら影響はない。
職場である都内のメガバンクでは、いつも通りの忙しい時間が流れている。
「先ぱーい。先輩の通帳とキャッシュカード、出金停止しておきましたよー」
これまたいつも通りの、どこか間延びした聞き慣れた声が私に話し掛ける。
後輩の瀬戸 奈緒(せと なお)ちゃん。私より一つ年下だけど、毎日バッチリ施されたヘアメイクの為か、見た目は私より大人っぽい。
「ありがとう、奈緒ちゃん」
「バッグごと盗難に遭ったんでしたっけ? 災難でしたねー」
奈緒ちゃんの言葉に、私は「はは……」と苦笑いすることしか出来ない。
さすがに、付き合っていた男性に盗まれたとは言えなかった……。まあ、それはそれで部長から『銀行員が通帳とキャッシュカード盗まれるってどういうことだ!』って怒られたけれど……。
「でも残念でしたね。お金、引き出されちゃったんですね」
「うん……でも一日の限度額分しかおろされてなかったから、不幸中の幸いかな……」
「暗証番号、安易だったんじゃないですか?」
「え、えー……そうかな?」
暗証番号自体は安易ではなかったと思うのだけれど、そう言えば以前、スマホのロック番号を彼に教えてしまったことがあったっけ、と思い出した。キャッシュカードも同じ番号だったんだよね……。
「申し訳ございません。順番でご案内しておりますので、番号札を取ってお待ちくださいませ」
私が前日に詐欺に遭ったからといって、職場にも世間にも当然ながら影響はない。
職場である都内のメガバンクでは、いつも通りの忙しい時間が流れている。
「先ぱーい。先輩の通帳とキャッシュカード、出金停止しておきましたよー」
これまたいつも通りの、どこか間延びした聞き慣れた声が私に話し掛ける。
後輩の瀬戸 奈緒(せと なお)ちゃん。私より一つ年下だけど、毎日バッチリ施されたヘアメイクの為か、見た目は私より大人っぽい。
「ありがとう、奈緒ちゃん」
「バッグごと盗難に遭ったんでしたっけ? 災難でしたねー」
奈緒ちゃんの言葉に、私は「はは……」と苦笑いすることしか出来ない。
さすがに、付き合っていた男性に盗まれたとは言えなかった……。まあ、それはそれで部長から『銀行員が通帳とキャッシュカード盗まれるってどういうことだ!』って怒られたけれど……。
「でも残念でしたね。お金、引き出されちゃったんですね」
「うん……でも一日の限度額分しかおろされてなかったから、不幸中の幸いかな……」
「暗証番号、安易だったんじゃないですか?」
「え、えー……そうかな?」
暗証番号自体は安易ではなかったと思うのだけれど、そう言えば以前、スマホのロック番号を彼に教えてしまったことがあったっけ、と思い出した。キャッシュカードも同じ番号だったんだよね……。