おはようからおやすみを笑顔で。
「うっかり屋な性格は変わらないけどさ、この考え方は自分の中で結構役立ってるんだ。ありがとね」

昔のことで改めてお礼を伝えるのはなんだか少し恥ずかしい。
けれど、斉野くんはとくに態度を変えることはなく、無表情のまま正面を見つめて運転を続ける。
……だけど。


「好きな子のためになにかアドバイスしてあげたいと思うのは、普通のことだろ」


さらりとそんなことを言うから、私は目を見開いて彼を見つめる。

そういえば、さっき告白っぽいこと言われたっけ⁉︎ こいつは俺のものだ、みたいな!


……いや、あのセリフは私がリョウくんに捕まらないための咄嗟のウソだろう。今の彼が私のことを好きとか、そんなことないって。


でも、


「……もしかして、中学生のときに告白してくれたのって、本気だった?」


ずっとウソ告白だと思っていたけれど、彼は日付まで覚えていた。小学生のときはたしかに散々意地悪をされたけれど、彼はウソ告白なんてあまりに酷い仕打ちをするような人だっただろうか、と今さらながら思った。
すると。


「ようやく信じてくれたのかよ。十年以上経ってるぞ」

そう言われ、顔から血の気が引くくらいに申しわけなく感じた。


「ご、ごめん! まさか本気とは思わず、私、ひどい返事をしてしまって!」

いい加減にしてとか、もう話し掛けてこないでとか、あまりに最低なことを言ってしまったことを強く悔やむ。
< 30 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop