おはようからおやすみを笑顔で。
車をさらに走らせ続けながら、斉野くんは再び口を開く。


「俺さ、実は半年前までニューヨーク市警に赴任してたんだ」

「ニューヨーク⁉︎ 凄い!」

私の反応に対し、斉野くんは「別に凄くねえよ。一年間だし」と答えるけれど、じゅうぶん凄いと思う。


「斉野くん、英語話せるんだね」

「まあ、向こうで仕事でするのに困らない程度には話せる。ていうか、そこはどうでもよくてだな」

斉野くんは、そこでいったん咳払いをした。
私もなんとなく姿勢を正す。
彼がこれから改まった話をするような、そんな気がしたからだ。


「……アメリカにいた間も、俺はお前のことを一日だって忘れたことはなかった」

「……え?」

「けど、さっきお前の元カレに言ったことは、半分本当で半分はウソだ」


どういうことだろう。
まず、さっきリョウくんに言ったことというのは……


「私を、奪うってやつ?」


気恥ずかしさに襲われながらもそう問うと、彼は「ああ」と答える。


「あと、九月十二日から俺のものだっていうセリフもだ」

「半分は本当で半分はウソってどういう意味? そもそも、なんで日付まで覚えてるの?」

「なんでって、お前の誕生日だっただろ。告白でオーケーもらったら誕生日を祝ってやりたいと思ってたんだ」

思い掛けない彼からのストレートな言葉に、私の全身がカッと熱くなる。
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