おはようからおやすみを笑顔で。
「でもあの日、お前と偶然再会した。まさかあんなところで会うなんて夢にも思ってなかったからすぐに気付かなかったけど、落としていった免許証を見て、やっぱり木本だ、って確信して、嬉しかった。柄にもなく、これは運命かもしれないとすら思った。そうしたら、自分からお前にかかわるつもりはなかったはずなのに、どうしてももう一度会って話をしたくなった」

「そう、だったんだ……」

「最初からそう言えば良かったんだけど。言葉で伝えよりも先に強引に連れ出してごめん」

ううん、と私は首を横に振る。

強引と言えば確かに強引だったけれど、彼の気持ちは素直に嬉しいと思える。

それに、リョウくんと再会したのが斉野くんと一緒にいる時で良かった。私一人だったら、うっかりリョウくんの言いなりになってしまっていた気がする。


「でも、斉野くん警察官なんだから、街中であんな騒ぎ起こしちゃダメでしょう」

今回は大ごとにはならなかったけれど、騒ぎになったら彼の職業に傷が付く気がする。だから、そのことについてだけ注意させてもらうけれど。


「さっきのは、あの男が悪い」

「そ、そうかもしれないけど」

「あいつはお前を傷付けた。だから許せなかった。騒ぎになって俺自身がどうなろうとそれはどうでも良かった」


そう言うと、彼はこう続ける。


「ただお前を守りたかった。それだけだ」
< 34 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop