おはようからおやすみを笑顔で。
「まさか沙耶が斉野くんと付き合ってたなんてねー! まさか未だに意地悪してたりしないわよね、あははは! まあ、その辺りは明日じっくり聞くわ!」

「お、お姉ちゃん! これ鍵だから、先に部屋入ってて!」

「え? ああ、お別れのチューとかあるもんね。了解、了解。ごゆっくりどうぞ。じゃあ斉野くん、明日のお昼、楽しみにしてるからね!」

そう言うと姉は私の部屋の鍵を持って、階段をのぼっていった。

姉の気配が消えたのを確認してから、私は斉野くんに向き直り、頭を下げる。


「斉野くん、ごめん! 変なことに巻き込んでしまって!」

「いや、俺が勝手に答えただけだし」


ゆっくりと顔を上げると、彼はいつもの涼しい顔をしている。困った様子はなさそうだけれど、それでも申し訳なさが募る。


「要するに、さっきの最低な元カレを明日お姉さんに会わせる予定だったけど、別れてしまったからそれが出来ない、ってことだろ? ちょうど明日は休みだし、付き合ってやれるけど?」

「大体そんな感じです……ほ、本当に彼氏のフリなんてしてくれるの……?」


昔は意地悪だったけれど、私が困っていたらどこまでも助けてくれる今の斉野くんは、なんて優しいのだろうーー


そう思っていたのだけれど。


「いや、俺警察官だから、市民に虚偽の発言は出来ないな」

などと突然の発言。


「え、でもさっきお姉ちゃんに私と付き合ってるって……」

「虚偽を事実にすれば問題ない」

「はい?」

すると彼は、どこまでもクールな顔と態度でとんでもない発言。


「ここで木本に選択肢をやる。
①、俺と付き合う。
②、俺の彼女になる。
③、俺の恋人になる」


いや、それ……


「全部一緒じゃん!」


さっきの優しさはどこへ? って思うくらいに強引な彼!

選択肢を作ったところで、正しい答えがわからないんですけど⁉︎
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