おはようからおやすみを笑顔で。
斉野の苦悩
沙耶と斉野が結ばれてから、一週間が経った。
幸せ絶頂期のはずだが、彼は職場のデスクで溜め息を一つ吐いた。
昔から頭が良かった彼は、沙耶と同じ中学校を卒業後、全国でもトップクラスの進学実績を誇る有名高校に入学。
そこでも成績トップを常にキープしたまま、東京大学の法学部に現役で難なく入学した。
幼い頃から将来は警察官になることを考えてきた彼は、国家試験一種を受け、合格者は五パーセントという日本最大難関試験をあっさりと潜り抜け、大学卒業後はいわゆるキャリア組としての警察官となった。
その後、警察庁に配属された彼は、幹部警察官としての研修を受け、警部補として勤務。関係省庁へ出向を繰り返しながら、現在入庁四年目。
仕事が出来ると評判の彼は、三十代前半で警視正にまで出世していくのでは、とあちこちで噂されているが、当の本人に出世欲があるかどうかと言えば、勿論ない訳ではないのだがーー彼にとっては目の前の仕事を全力で取り込むだけらしく、彼自身はそんな噂は、実は気にもとめていない。