おはようからおやすみを笑顔で。
しかし、それから数分も経たない内に、突然沙耶が
「……そう言えば、昨日は神代くんに会ったの」
と話してきたのだった。
斉野からしたら、待ちに待った話題……のはずが、沙耶が口を開いたのがあまりに急だったため、平気なフリをしつつも内心は焦っていた。
しかも、だ。沙耶の顔が、なんだか少し暗い。
そして、沙耶と神代が連絡を取り合って二人で会っていたという事実。ほんの数パーセントくらいは、白井の見間違いとか、ほかにも誰かいたとか、そういう可能性も願っていたのだが、やはりそうではなかった。
「へ、へえ」
と返すのが精一杯な自分自身を、斉野は恥じる。
しかし、その後で沙耶から放たれた言葉は、予想外のものだった。
「すぐに話せば良かったんだけど、誤解されたら嫌だなって思っちゃって。誤解される要素なんてなにもないんだけどね、偶然会っただけだから」
偶然会っただけ。
自分はなにか勘違いしていたようだ、と斉野は気付く。
どうやら、神代と二人で会っていたことには違いないが、示し合わせて会った訳ではない様子だ。
言われてみれば確かに、白井からは〝二人が一緒にいた〟としか聞いていない。
斉野は、急激に肩の力が抜けるのを感じた。
そんな斉野の様子には気付くことなく、沙耶は言葉を続ける。
「誤解を恐れて無駄に隠し事するのは良くないって、この間の凛花ちゃんの一件でわかったばかりなのにね」
「は、はは……別に、あいつと偶然会ったからって、誤解するような要素なにもないだろ」
動揺を悟られないように斉野がそう伝えると、沙耶は「うん、そうなんだけど、ただ……」と何故か苦い顔をする。すると。
「会ったのはほんとに偶然だったんだけど、その時に、その、告白……されちゃって」