名取くん、気付いてないんですか?
掃除当番が、今日だった。隣には、相澤くんがわたしと同じく箒を持っている。
せっかく席が離れられたというのに、出席番号が変わらなければ掃除の班は同じということに気づけなかった――!
馬鹿、わたしの馬鹿! 腹いせに箒で相澤くんをつついてやる! おらおら!
「朝霧さん……掃除やろうね?」
「やってますー! 相澤くんの方がやってないんじゃないのー?」
「……朝霧さんって、そんなキャラだっけ」
その言葉にムッときて、盛大に相澤くんを睨みつけた。これで何度目だろう。なぜだか全く相澤くんに効いてる気配がない。
悔しくて、もう思いの丈をぶつけてしまうことにした。
「………あ、相澤くんが、わたしからリサちゃんを取ろうとするから」
言ってみて、気付いた。今わたしの言ったことって、とても恥ずかしい。これって、相澤くんに激しく嫉妬して、面白くないからって八つ当たりしてるだけなんだよね……。
わたしって、そこまでリサちゃんのこと、好きだったんだ……?
うーん、やっぱり、恥ずかしい。でも、負けられない。相澤くんの気持ちがただの興味本位だったり、本気じゃないなら、リサちゃんを譲ることなんてできない。
あれ……? でももし、本気だったら……。本気で、リサちゃんのことを想ってるんだとしたら……?
いやそれは、わたしだって恋バナ好きだし、応援するけど。わたしが嫌なのは、中途半端に接触して、変にリサちゃんが気を持ってしまわせたくないからだし。
いやでも、ないでしょ! ないない! 相澤くんがリサちゃんを? なーいないないない!
「……好きって、言っても?」
「は?」
えっ、だから、ないって……。
「朝霧さんは応援してくれないの?」
「………………げぇっ!?」
言葉の意味を理解した途端、汚い声を出してしまった。慌てて口を抑える。相澤くんには……あっはい気付かれてますね。
うっそでしょ!? へぁ!? 本気で言ってますか! え、えええええ、ええ、え……。
……えー。やだなぁ。
「あのー」
手招きをする。
「ん?」と耳を寄せてきた相澤くんにわたしは耳打ちを……することはなく。
近づいてきた肩に、手を乗せる。
「そんな簡単に、リサちゃんはあげられないよ」
そう、はっきりと宣戦布告をして見せたのだった。